一九九九年、初夏。
ゴールデンウィークまでもう少しという海岸はまだ閑散としている。海際一等地を目指して駐車場からバーベキュー道具を運ぶ。荷物運びは大体サボるやつや、軽い荷物ばかり運ぶ輩がでるものだが、この日は揚げたてのコロッケが食べられるということもあり、みんな額に汗を浮かべながら数回海岸と駐車場をアウトドアチェア、木炭、七輪などとともに往復する。
自重トレーニングに精を出し、テレビを見ながら本を読みながら筋肉を鍛えることが趣味の山ちゃんは、一つ十キロのダッチオーブンを持ち、自分の腹筋をなでながら荷物運びを軽々とこなす。さっさと海外に降りて素早くビールをクーラーボックスから取り出している。
「やまちゃーん。こっちにも一本ちょうだい。」
朝とはいえ初夏の気温ですでに汗だく。クーラーボックスの氷水で揺られていた缶ビールがみるみる胃袋に吸い込まれていく。
万年炊事当番の役割を忘れてはいけない。木炭の素早い着火。木炭は着火してから充分な火力を得られるようになるまで20分以上はかかる。調理の準備が整い次第すぐに加熱できるように火力を保つ。これがバーベキューの鉄則なのだ。休みの朝から集まるから朝食抜きで来るやつらも多い。すぐに食べられるおつまみをテーブルに出すのも忘れてはならない。
プラカップにたっぷりの自家製ネギ味噌を入れる。ネギ味噌はすぐに提供できるように前の晩に仕込んでおいた。山ほどのみじん切り長ネギ、味噌、豆板醤、梅干しを刻んだペースト、かつおぶしを混ぜ込んで一晩馴染ませる。
クーラーボックスから芯まで冷やされたキュウリを取り出し、手で半分に折る。ネギ味噌をたっぷり掬ってキュウリに塗りたくってかじりつく。水分たっぷりのキュウリと酸味辛味のきいたネギ味噌で二日酔いはすっかり飛んでいく。ビールがまたまた旨い。 キュウリをぽりんぽりんとかじっているうちに七輪の中の木炭が煌々と揺らめき始めた。
今日の目的を復習しよう。ダッチオーブンに油を馴染ませる。炭火でさらにダッチオーブンを黒くして男らしいブラックポットに近づける。揚げたてサクサクのコロッケにソースをどぼどぼとかけて海を眺めつつ頬張る。コロッケは贅沢チョイスでジャガイモとカボチャをそれぞれ別々に作ることにした。あまり甘いものが好きではないオレにはカボチャは必要ないのだが、女子受けの良いカボチャコロッケで点数を稼ぐことにする。
厚揚げ七輪炭火焼き、自家製ネギ味噌添え
コロッケの基本材料、ジャガイモとカボチャを蒸し焼きにする。時間が多少かかるので、その前に腹持ちの良いおつまみを作る。食材を七輪炭火で焼くだけ、10分もかからない即席レシピで、これを嫌いな人はそうそういないレギュラーバーベキューメニューだ。
- ネギ味噌は前日に作っておく。大量の長ネギ、包丁で細かくたたいた梅干しの実、豆板醤、おかかを混ぜ合わせる。
- 七輪中火の焼き網に厚揚げをのせる。少し焦げ目がつく程度に転がしながら全表面をかりかりに焼き上げる。
- カットしてネギ味噌をちょっと多めってくらいにのせてどうぞ。